タイ就労ビザ(Non-Bビザ)と労働許可(Work Permit)について

最終更新日: 2025年11月1日

タイ就労ビザ(Non-Bビザ)と労働許可取得/更新/キャンセルについて

  1. タイにおける「就労」の公式定義
  2. ビザと労働許可の「デュアル(2重)許可構造」
  3. 審査は「受け入れ企業の合法性と就労者の属性」
  4. 申請場所(新規・更新)
  5. キャンセル・失効に関する手続きと注意
  6. その他の就労関連のビザ(SMART/LTR/ABTC/DTV)について

1. タイにおける「就労」の公式定義

外国人就労法(Alien Employment Act B.E.2551)第5条では、賃金その他の利益の有無にかかわらず、肉体または知識をもって働く行為を「就労」と定義され、ビザ取得の必要性があります。このため、NGO 活動や学校支援等の無償ボランティアであっても、公的には、不法就労と判断されるリスクを有しています。

【免除規定】

区分 内容
30日以内の短期商用 日本国籍を持つ場合、30日以内であれば、タイ国での商談・展示会・会議出席等を目的とする 短期滞在はビザ免除対象とされています。
ただし対象は「商談・視察」に限られ、設置・操作・現場管理等の 実務行為は免除対象外=「就労」となります。
15日以内の緊急就労 修理・設置・技術支援を目的とした緊急渡航が必要となる場合、労働省雇用局への 事前届出(WP.34)を提出することにより、ビザ免除対象となります。

2. ビザと労働許可の「デュアル(2重)許可構造」

車の両輪のように、合法的にタイで就労を行うには、警察省移民局(Immigration Bureau)によるビザ審査労働省雇用管理局(Department of Employment)による労働許可審査の双方を経て、許可を得る必要があります。 どちらか一方でも欠けると滞在根拠を失ってしまい、出国義務が発生します。 よくある誤解ですが、その逆は真ならずで、一方を延長しても他方が自動延長されることはありません。この誤解によって 不法滞在・不法就労に発展する事例が非常に多いので、正しい認識を持つことが大切です。

就労ビザと労働許可の二重チェック構造

3. 審査は「受け入れ企業の合法性と就労者の属性」

審査基準は、公開されていませんが、書類上での勤務先企業の合法性の確認(法規制や外資規制の遵守や納税状況)と実態の確認調査。そして、就労者個人の属性(役職に応じた学籍・経歴、良好な健康状態)がテーマとなります。 書類上、形式的に合法であったり、矛盾がなくとも、実態調査で整合性がなければ不許可となります。

企業(雇用主)側の基準

確認項目 内容
登記書類の合法性 登記簿(資本金と外国人数の割合確認)/株主名簿/有効な事業ライセンス保持の確認
納税書類の適正性 年次決算/従業員の所得税申告書(PND1)/付加価値税申告書(PP30)の納付と申請内容確認
タイ人雇用義務 雇用レシオ(現地法人1:4、駐在員事務所1:2など)の遵守確認
事業実態の証明 職場写真/賃貸契約書/公共料金領収書などの確認

就労者(個人)側の基準

国籍・職種により、給与水準・年齢・学歴・職歴年数・健康状態の要件が定められます。 日本国籍を持ち、現地法人で働くのであれば最低月額賃金 50,000 THB以上の定めがありますが、BOI企業においては、別の役職別基準(給与・学歴・職歴年数)により、審査されます。 人事にあたっては、急いで、無関係な業種からの転職者や、新卒者などの採用には注意が必要です。

役職 最低年齢 学歴/職歴 最低月額賃金(THB)
上級幹部27歳以上実務経験5年以上150,000
管理職27歳以上学士以上+経験5年以上75,000

4. 申請場所(新規・延長)

申請場所については、会社住所や会社が一般現地法人かBOI(またはそれに準ずる)かによって異なります。

区分 申請場所・方法 概要
Bビザ
(Non-Immigrant B)
【新規申請】
在外タイ大使館・領事館(e-VISA)
【更新申請】
所轄の移民局(Immigration)
原則国外申請。e-VISA ポータルからオンライン申請可。国内切替は規定上可能だが非常に厳格。
労働許可
(Work Permit)
労働省雇用管理局(e-WorkPermit) 就労ビザ取得後、雇用主がオンライン申請。電子署名済み e-WorkPermit発行。
BOI/特定業種 One Stop Service Center(OSSC / TIESC) 就労ビザと労働許可(Work Permit)を一括処理。

6. キャンセル・失効に関する手続きと注意

就労ビザと労働許可のキャンセル時間軸

就労ビザや労働許可証(Work Permit)のキャンセル手続きは、取得や更新の申請よりも簡単だと考える人が多いですが、実際には納税状況の確認タイ人雇用比率の確認などが厳格に行われ、むしろ逆に厳しい手続きであるのが実情です。そして、「失効」と「キャンセル手続き」についての認識の混同もあります。

就労ビザについては、正式なキャンセル手続きを完了していない場合、次回のビザ申請(転職時や他のビザ更新時など)でペナルティや制限を受ける可能性があります。このため、必ず、キャンセル手続き(確認してキャンセルの許可をもらうイメージ)を怠らないよう注意してください。 通常、労働許可証(Work Permit)が失効すると、それに連動して就労ビザも失効しますが、「労働許可証のキャンセル=ビザのキャンセル」ではないことを正しく理解しておく必要があります。

よくあるトラブルとして、勤務先との揉め事や退職のいきさつをめぐる諍いなどがあります。労働許可証のキャンセルは本人でも手続き可能ですが、就労ビザのキャンセルについては勤務先の協力が不可欠です。円満でない退職の場合、タイでの滞在継続において大きな不利益を被るおそれがあります。

区分 内容
就労ビザ
(Non-B Visa)
雇用終了日(就労者にとっては退職日)の21日前から当日までに行うことができます。
注意点として、このキャンセル手続きは「退職予定通知申請」であり、 手続きが行われた日がビザ失効日ではないことに注意が必要です。
労働許可
(Work Permit)
雇用終了日(就労者にとっては退職日)または契約終了日から 15日以内にキャンセル手続きを行う必要があります。

退職時に勤務先から受取る必要書類

書類名 内容・目的
労働許可(WorkPemrit)の
キャンセル証明書の写し
転職時や新規ビザ申請時に利用。紙の労働許可証はデータ化して保管が望ましい。
給与所得の源泉徴収票
(50 Tawi)
退職月までの給与と退職金の源泉徴収票。翌年、個人確定申告(PND91)で利用。
雇用証明書
(Employment Certificate)
在職期間・役職を明記。

7. その他の就労関連のビザ(SMART/LTR/ABTC/DTV)について

SMART Visa(BOI)

高度人材・投資家・スタートアップ起業家を対象に、 BOI が運用する特別ビザです。最長4年の滞在、条件を満たす場合はWork Permit 免除等の特典があります。 2025年以降、対象業種や資金・保険要件等の改定が続いているため、 申請直前にBOI 告示の最新要件を必ず確認してください。

LTR Visa(Long-Term Resident)

富裕層・高度技術者・投資家・リモートワーカーを対象に、BOI LTR プログラム が運用する10年滞在(5年+5年)制度です。 就労者カテゴリー(Highly-Skilled Professionals / Work-from-Thailand Professionals)では Digital Work Permit により就労が認められ、一般的な1:4のタイ人雇用義務が免除されます。 なお、高度専門職は個人所得税の特例の対象となります。

APEC・ビジネス・トラベル・カード (APEC Business Travel Card: ABTC)

日本に本社がある場合、低コストで比較的取りやすいビザです。APEC域内を頻繁に渡航するビジネス関係者の移動を円滑にするためのカードを利用してタイに入国すると、最長90日間の滞在が認められます。ただし、ABTCはあくまで短期の商用目的(貿易・投資等に従事している企業の商用がメイン)に限定されており、就労は不可です。よくある質問ですが、ビザ延長や銀行口座開設はできません。一年に90日滞在を繰り返す場合、就労滞在を疑われますので、タイへの入国を拒否されたケースもあります。

DT Visa(Destination Thailand Visa)

タイの「DTV(Destination Thailand Visa)」は、主にタイ国外の雇用主に雇用されているリモートワーカーやフリーランス、個人事業主など、雇用契約に縛られずに収入を得る「個人で活動する専門職」を対象として、タイ国外の大使館・領事館で発行されるビザです。 このビザにより、は1回の入国につき最大180日間タイに滞在することができ、さらにタイ入国後に1回に限り、入国管理局で180日間の延長申請が可能です。 ただし、タイ国内の企業での就労や、タイの顧客に対するフリーランスの仕事など、タイ国内での就労は禁止されています。タイ国内で働くことを希望する場合は、就労ビザへの変更と労働許可証の申請が必要となります。。



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