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業種ごとのライセンス・許認可
タイ事業の生命線|業種ごとのライセンス・許認可
最終更新日: 2025年11月1日
“登記できた”はスタート地点。“営業できる”とは限らない。
タイでの法人設立には、まず外国人事業法(FBA)をはじめとする外資規制の遵守 が前提となります。そのうえで、設立後の運営においては「事業ごとのライセンス」や各種許認可の取得が重要です。無許可・無認可の営業行為は処罰の対象となるだけでなく、その会社で働く外国人の就労ビザや労働許可(Work Permit)の発給が認められない 事態につながります。
もっとも、ライセンスの種類によっては、取得や認可に数か月から数年を要するケースも少なくありません。十分な投資資金があれば既存企業の買収を検討するのも一案ですが、タイミングよく売り手が現れるとは限りません。このため、実務上は一旦別の事業内容で登記を行い、その後ライセンスが取得できるまで本来の事業を開始せず待機する――といった妥協的な進め方が取られることも多いのが実情です。
以下では、実務経験を踏まえ、主要な業種における必要ライセンスとその要点を紹介します。実際の申請に必要な書類や要件は公表されている場合もありますが、政府や行政の方針変更、管轄官による判断の違いなどにより、内容が変わることもあります。したがって、常に最新情報の確認 を怠らず、また取得までの遅延リスク を想定しておくことが大切です。
製造業
タイでの工場設立に関する法的注意点
タイでは、製造業は原則として外国人事業法(Foreign Business Act=FBA) の規制対象外とされており、
BOI(投資委員会)の奨励措置を受けなくても、
外国資本100%での会社設立・操業が可能 (但し、特定業種(例:兵器、鉱業、農産加工など)は除く)です。
注意すべきは「製造(manufacturing) 」と
「受託製造(contract manufacturing) 」の区別です。
顧客の仕様やデザインに基づく受託製造は、FBA上「サービス業」とみなされ、
外国人事業許可(Foreign Business License:FBL) の取得が 必要となる場合があります。
また、卸売・小売・修理業を同一法人で行う場合も同様にFBLの対象となることがあるため、事業目的の明確化が重要です。
工場操業に必要な主な許認可
ライセンス
根拠法
管轄機関
主なポイント
工場操業許可(รง.4)
工場法 B.E.2535
工業省(DIW)
第3種工場は操業前に許可必須。無許可操業は罰則対象。
建築許可
建築規制法 B.E.2522
地方自治体
着工前に申請。用途変更も許可対象。
EIA / IEE
環境保全法 B.E.2535
ONEP
一定規模以上の事業で環境影響評価が必要。
発電設備許可
エネルギー規制法 B.E.2550
ERC
自家発電・売電の規模により許可・届出要。
工業団地・特別区での設立
タイ工業団地公社(IEAT)や東部経済回廊(EEC)内に設立する場合は、
IEAT法に基づくワンストップサービス が適用され、
建築・環境・工場許可の審査が迅速化されます。
ただし、最終的な許可は各個別法に基づくため、
IEAT・自治体・環境局などの指示に従って申請を進める必要があります。
商社(卸売・貿易業)
タイにおける商社業(卸売・貿易)の法的注意点
タイでの商社業(卸売・貿易)は、原則として
外国人事業法(Foreign Business Act:FBA) の対象となり、外資による事業参入には厳しい制限があります。そのため、資本金要件の充足 やBOI(投資委員会)恩典の活用 など、法的枠組みを理解した上での進出設計が重要です。
資本金規模と進出ルート
進出形態
最低資本金
実務上のポイント
FBA規制回避ルート
1億バーツ以上
卸売業を行う外資企業がFBAライセンスを不要とする条件。小売を兼ねる場合は追加要件が発生。
FBAライセンス取得
300万バーツ以上
商務省外国事業課(DBD)による審査を経て取得。販売範囲や顧客層に条件が付される場合がある。
BOI(TISO)
1,000万バーツ以上
BOIのTISO(Trade and Investment Support Office) の取得。
輸出業務、域内卸売、調達支援、物流・市場調査などB2B中心の活動が対象であり、
エンドユーザー(個人消費者)への販売=小売は対象外 。また、TISO事業のために年間経費1千万バーツの経費支出 が必要。
一般企業(FBA非該当事業)
200万バーツ以上
FBAの規制を受けない単純輸出や、外国人就労ビザの資本金要件(1名あたり200万バーツ)を満たす法人形態。
TISO(Trade and Investment Support Office)の条件
年間の販売および管理費支出(Selling & Administrative Expenses)の条件
TISO認定を受けるためには、年間の販売および管理費支出が1,000万バーツを超えていることが求められます(最新のガイドライン確認推奨)。実際には、オフィスや倉庫の賃貸料や社員給与および福利厚生費等が大半を占めると言えます。
商業活動の条件(販売形態の制限)
TISOは、商業活動(Commercial Trading)を本来目的としません。
そのため、認められる活動は以下の通りです:
Wholesaling of Thai-made goods(タイ製品の卸売)
Group Distribution(グループ内販売)
つまり、親会社・関連会社向けの輸出・供給 といった形態はBOI支援の範囲内で認められますが、最終消費者(End user)への販売(Retail / B2C)は不可 となります。
エンドユーザー向け販売を行う場合は「小売業(Retail Business)」とみなされ、BOI(TISO)の支援対象外 となる点に注意が必要です。
取扱い商品と必要ライセンス
事業内容
FBA規制の適用
必要なライセンス・登録
輸出入(含む三国間貿易)
原則、規制対象外
関税局での輸出入業者登録、VAT登録。商品によりFDA・農業省等の追加許可を要する。
国内卸売(B2B販売)
FBA適用
原則FBAライセンスが必要。ただし
①資本金1億バーツ以上 または②BOI TISO承認 で免除可。
TISO承認企業は、B2B取引限定で国内販売が認められる 。
小売(B2C販売)
FBA適用
外国資本比率49%以下でタイ人多数所有 の場合を除き、原則として外資企業には認められない。
TISO承認企業も対象外。
内装業・小規模な建築業
タイにおける内装業の業務範囲とライセンス要件
タイで「内装業者(Interior Contractor)」として活動する場合、その業務内容が
デザイン中心 なのか、施工・請負を伴うもの なのかによって、
必要となるライセンスや登録機関が異なります。
以下は、実務上よく見られる業務区分と、それに対応するライセンス体系の整理です。
但し、実際の要件は工事の性質や規模、契約形態によって異なります。内装設計や施工を請け負う法人は、建築家評議会(Architect Council) および
工業事業局(DIW) の双方の要件を確認することが重要です。
業務の範囲
必要ライセンス・登録
申請先・監督機関
デザイン・装飾中心業務
(家具配置・壁面装飾・照明計画など、構造に関わらない範囲)
原則不要
-
インテリア設計(Interior Architecture)
建物の内装設計・間仕切り変更・空調・電気配線の設計など
建築家法(Architect Act B.E.2543) に基づく
登録建築士(Architect License)が必要。
(500㎡以上の公共空間を扱う場合)
タイ建築家評議会(Architect Council of Thailand)
内装施工・請負工事(Interior Contractor)
デザインを含む施工請負、店舗・オフィス内装工事など
建設業ライセンス (Contractor License)
法人として工業事業局(DIW)に申請。
工事規模や工法に応じ、建築家・エンジニアの資格保有者が取締役に含まれる必要あり。
工業事業局(DIW)
家具製作・什器設置業務
店舗什器・展示会ブースの製作・設置など
製造登録または小規模製造許可が必要な場合あり。
大規模工房では工業事業ライセンス(Factory License)が必要。
工業事業局(DIW)または地方工業事務所
外国人技術者・デザイナーの就労
資格証明書または関連ライセンスの提示後、
労働許可証(Work Permit)の取得が必要。
無資格の設計・施工業務は外国人就業禁止職種に該当するおそれあり。
労働省(Ministry of Labour)
雇用局(Department of Employment)
ホテル業
タイのホテル事業の最新動向
タイでは、宿泊サービスを提供するすべての施設にホテル法(Hotel Act B.E.2547, 2004) に基づく登録または許可が義務付けられています。
ホテル法によるライセンスは、客室数や提供サービスの範囲によりタイプ1〜4 に分類されます。
項目
タイプ1
タイプ2
タイプ3
タイプ4
サービス
宿泊のみ
宿泊+飲食 (レストラン/調理場所)
宿泊+飲食+会議室 or 娯楽施設
宿泊+飲食+会議室+娯楽施設
客室の広さ
8㎡以上
8㎡以上
14㎡以上
14㎡以上
客室要件
50室以下:4室以下かつ宿泊者20人未満の小規模宿泊施設は届出のみ
50室以上
10〜79室の中規模ホテルは初期環境影響評価(IEE:EIAの簡易版)が必要
80室以上の大規模ホテルは環境影響評価(EIA)が必須
観光業回復と経済活性化を目的とした「ホスピタリティ再編政策」~居住用建物の用途変更規制緩和
2019年以降(特に2022〜2023年の政府方針)、建物用途変更に関する規制が段階的に緩和されました。一定の安全・衛生基準を満たす既存施設に対しては、ホテルライセンスの取得を認める仕組みが整備され、違法営業状態にあった宿泊施設(一部報道では約90,000件以上が違法状態と指摘)の合法化が推進されています。
コンドミニアムの短期賃貸(民泊利用)禁止に注意
一方、分譲コンドミニアムをホテル用途に利用することは依然として禁止されています。コンドミニアム法(Condominium Act B.E. 2522)および土地局通達(2023年11月6日付)により、「居住目的を主とし、短期賃貸や商業的宿泊サービスを含まない」ことが明確化されたためです。コンドミニアムを利用した、30日未満の短期賃貸(Airbnb等)はホテル法および同法違反として摘発対象となっています。
外資参入とBOI奨励措置
ホテル業は外資参入が認められ、BOI(Board of Investment) による投資奨励が適用される場合があります(カテゴリ7.22: Hotel Business)。
主な条件は以下の通りです:
客室数100室以上 、または
土地代・運転資金を除く最低投資額5億バーツ以上 (原則新築)
健康・美容関連(スパ/ネイル/理美容)
タイの健康・美容関連事業の最新動向
タイでは、美容・ヘルスケア分野で外国人が事業を行う場合、タイ人ローカルとの提携が必須となります。
法人設立の要件としては、法人役員の過半数をタイ人とする必要があること、また、外国人は理容師・美容師としての施術業務が外国人就業禁止職種に該当するため、直接の施術はできないことに注意です。外国人は、経営者や技術指導のトレーナーなどの立場での活動に限定されます。
業種
ライセンスの種類
管轄
理美容/ネイルサロン
・理美容請負業営業許可 ・事業所設置許可(Premise License)
地管轄区役所等衛生局(Public Health Division) ※地域により申請先が異なる
マッサージ/スパ
・健康施設営業許可(Health Establishment License) ・健康事業所基準証明書(Certificate of Health or Beauty Establishment Standards)
保健サービス支援局(HSS/Ministry of Public Health) 地方保健局(Provincial Public Health Office)
医療行為に該当するケースに注意
タイ保健省(Ministry of Public Health)が定義する「医療・医療類似行為」に該当する代表的なケースです。医療事故の場合、知らなかったでは済まされないので注意が必要です。
分野
例
必要なライセンス
美容医療 (Aesthetic / Clinic)
ボトックス注射、フィラー注入、スレッドリフト、レーザー照射、HIFU、脂肪溶解注射など
Private Clinic License (民間診療所許可)
皮膚治療 (Dermatology)
美白点滴、PRP注射、ホルモン治療、メソセラピー、ピーリング等
Private Clinic License +医師免許(タイ医師会登録)
メディカルスパ (Medical Spa)
医療機器を使用するスパ、医師監修のデトックス・治療型スパ
Clinic License + Health Establishment License
鍼・治療マッサージ
鍼治療、電気治療、ハーブ球を用いた治療目的マッサージ
Clinic License (治療施設として登録)
旅行業
タイの旅行業の最新動向
かつて隆盛を極めた日本人のタイの旅行代理店ビジネス は、観光のデジタル化によって急速に様変わりしました。
航空券やホテル予約はBooking.com,Trip.com,Agoda などのオンラインサイトで個人手配が可能となり、
SNSを通じた情報共有も進んだ結果、従来型のパッケージツアーはその存在感を失いつつあります。
かつて主流だった夜遊び中心のツアーも、規制強化と価値観の変化により市場が縮小しました。
新たな成長領域
一方で、旅行業そのものが消えたわけではありません。
現在も成長が期待できるのは、次の3つの専門分野 です。
いずれも高度な通訳力や現地調整力が求められ、日本人事業者の強みを生かしやすい領域です。
工場視察・ビジネス調査 :企業視察や調査・展示会対応など、ビジネス渡航を中心とする法人向け分野。
メディカルツーリズム :美容整形・医療・リハビリなど、専門医療目的の訪タイ客を対象とした高付加価値ツアー。
アウトバウンド(タイ人富裕層の日本旅行) :日本文化体験やラグジュアリー旅行をテーマに、タイ人を日本へ送客する市場。
旅行業の外資規制とライセンス制度
ただし、旅行業はタイ外資規制の厳しい業種 に分類されます。
会社設立時にはタイ人株主が51%以上 を保有し、
取締役の過半もタイ国籍である必要があります。
また、外国人によるガイド業務は原則禁止 されており、許可なく現場で案内業務を行うことはできません。
旅行業ライセンス(Tourism Business License)の種類と要件
タイの旅行業ライセンスは、事業内容に応じて4タイプ に分類されます。管轄は、観光庁(TAT)です。
それぞれ申請手数料・保証金額が異なり、業者向け保険への加入も義務付けられています。
International (Outbound) :タイ国内から海外への旅行手配
International (Inbound) :外国人旅行者のタイ国内観光
Domestic :タイ人を対象とした国内観光
Domestic(Specific) :特定地域(1地区限定)の国内観光
飲食・レストラン業
タイの飲食・レストラン業事業の動向
タイでは、日本料理が日本以上に高値で提供されることも珍しくありません。一方で、人件費や家賃は日本よりも低いことから、コロナ以前は、飲食業の経験がない日本人が気軽に店を始めるケースも多く見られました。しかし、そうした時代はすでに過去のものです。現在では、日系大手フランチャイズや有名店の進出が相次いでおり、味の管理・従業員教育・コスト管理・仕入れ といった飲食店経営のノウハウを持たない個人が、独自に開業・維持することは極めて困難になっています。成功のためには、徹底した市場調査と戦略立案が欠かせません。
開業失敗の主な原因とリスク 「タイなら何とかなる」という誤解 が、失敗の大きな原因の一つです。 「自分の店を持ちたい」という思いが先行し、趣味的な開業に走って初期資金を浪費してしまうケースも少なくありません。ランニングコストの見積もり、集客人数の想定、価格設定などの事業計画を疎かにしてしまう傾向があります。店内集客を主とするのか、デリバリー中心とするのかによっても、必要な費用や人員構成は大きく異なります。座席数(店舗の広さ)、スタッフ人数、在庫リスク、広告費など、開業前にすべてのコストを洗い出して把握しておくことが重要です。
詐欺・コスト超過リスク: 残念ながら、「日本人をだますのは日本人」というケースもあります。現地事情に不慣れな日本人を狙った出店詐欺や、相場を大幅に上回る内装費・仕入契約によって資金を失う例も後を絶ちません。
マネジメントリスク: タイ人スタッフによる怠慢や盗難、税金・警察関連の非公式支払いなど、現実的な課題に直面し、資金が枯渇して廃業に至るケースも多いです。また、賃貸契約にも注意が必要です。契約期間(通常2〜3年)を待たずに閉店し、居抜きで店舗を売却する事例も少なくありません。
こうしたリスクを踏まえると、個人での新規出店よりも、既存ブランドの提供、フランチャイズ加盟、店舗転売 といったローリスク型のビジネスモデルを検討することをおすすめします。
開業に必要な主なライセンス
レストランライセンスは開業状態を見に来るのでプレオープン後すぐか、開業後速やかに行う必要がある。
またアルコールライセンスについて、タイ、殊にバンコクは、一般的なイメージとは裏腹に、お酒の販売に対して非常に厳しい規制がある。取締まる側はいつでも取締りができる状態にあり、安易に考えると経営が危うくなるので十分に理解しておくことが必要(本当に怖い話がたくさんあります)。
種類
要件
申請場所
規制・注意点
飲食業
201㎡以上: 「営業許可書」 200㎡以下: 「営業届出証明書」
設立場所のある区役所など
開業後速やかに申請。食品衛生研修の受講とテスト合格が必要。
アルコール販売
-
財務省物品(消費)税局
販売時間の制限/禁酒日/販売禁止区域(教育機関から300m圏内等)に注意。 広告規制も厳しく、違反時は高額罰金のリスク。
たばこ販売
-
財務省物品(消費)税局
空調設備のある店内は禁煙(違反時罰金あり)。 禁煙標識の掲示が必須。
牛肉・生鮮食品販売
冷蔵・冷凍設備の設置義務あり
食品医薬品局(FDA) または家畜開発局(DLD)
牛肉・豚肉など動物性食品の販売には、食肉処理場登録番号 や輸入証明書 の提示が必要。
店舗での加工・再包装を行う場合は、追加の食品製造・加工許可 が必要になる。
学習塾・教育施設
タイにおける教育事業とスクールライセンスの重要性
タイで教育事業を行う場合、教育省(Ministry of Education)の「学校法人ライセンス(Private School License)」 の取得が、長期的な経営安定の鍵となります。認可校は、外国人教師の就労ビザ/労働許可(Work Permit) に関する運用が明確になり、人材確保の自由度が高まります。逆に、無認可の私塾形態では、教員数や採用の面で制約が残り、固定費に対する収益拡大が難しくなる傾向があります。
ライセンス取得に必要な主な条件
学校法人ライセンスを得るには、施設・人材面で、厳格な基準が設けられています。まず、施設として、教室面積は最低100㎡以上、生徒1人あたり1.5~2㎡を確保 する必要があります。施設基準としては、教室20㎡以上、男女別トイレの設置など最低要件が定められています。次に人材としては、タイ人の校長を置くことです。ライセンスの申請者および運営責任者がタイ国籍であることが必須です。法人形態としては、外国資本100%の法人では申請できず、外国企業が直接教育機関を設立することは認められていません。なお、生徒数が7名未満の少人数クラスは「非認可教育活動」として扱われ、一定の例外が認められています。
手続きと期間、初期コストの実態
許可取得後に発給される学校設立許可証(School Establishment License)は、開校後の運営基盤として多くの優遇をもたらします。たとえば、正規の教育機関として登録された学校では、外国人教師1名あたり最大4名のタイ人雇用が条件となるなど、明確な基準でワークパーミット発給が認められる点が大きな利点です。また、教育事業は付加価値税(VAT)の非課税対象に分類され、授業料収入に対してVATの申告義務が免除されます。法人税の面でも、教育関連費や施設改修費が損金算入対象となり、他業種に比べて税務上の負担が軽いのが特徴です。
必要な許認可
私設教育施設設立認可(Private School License)
管轄
教育省/私立学校委員会事務局(OPEC:Office of the Private Education Commission)
申請の流れ・期間
申請者・運営責任者はタイ国籍(タイ人校長)に限る。 3年以上の賃貸契約書、事業計画書、役員会議事録の準備。教育省 私学振興課(OPEC)へ申請、面接・現地査察の後、学校設立許可証発給(目安:6か月〜1年)。 許可証受領後6か月以内に開校義務。
人材紹介業
タイにおける人材紹介業の規制
タイの人材ビジネスは「国内紹介」「海外紹介」「派遣」のいずれかに応じて異なる法令が適用され、監督官庁も異なります。
人材ビジネスの区分と主要要件
項目
国内職業紹介
海外職業紹介
人材派遣
所管官庁
労働省 職業紹介局(DOE)
労働省 職業紹介局(DOE)
労働保護局(DLPW)
許可制度
必要
必要
不要 (報告・監督対象)
保証金
10万バーツ
500万バーツ
不要
株主要件
指定なし (FBL注意)
タイ資本 75%以上
指定なし (FBL注意)
国内職業紹介(Domestic Recruitment Service)
申請は法人のみが対象です。代表者には犯罪経歴や職歴などの前歴照会を通じた適格性審査 が行われ、事務所については16㎡以上の広さが求められます。
さらに、10万バーツ以上の保証金 を供託する必要があります。ホテルや寄宿舎を事務所として使用することは認められていません。
海外職業紹介(Overseas Employment Agency)
海外への人材送出を行う場合は、株式会社形態での申請のみが対象です。
法人については、払込資本金100万バーツ以上、株主の75%以上がタイ国籍である必要があります。
さらに、保証金500万バーツの供託 、代表者の指紋提出および犯罪経歴や職歴などの前歴照会を通じた適格性審査 が求められます。
この許可により、タイ人労働者を合法的に海外で雇用することが可能となりますが、外資による直接参入はほとんど認められていません。
人材派遣業(Outsourcing / Labour Supply)
派遣会社が自社で雇用した労働者を他社で勤務させる形態であり、営業許可は不要ですが、改正法により派遣元が正式な雇用主としての責任を負うことが定められています。
派遣労働者には、派遣先企業の正社員と同等の賃金・福利厚生・安全衛生を保障する「同等待遇義務」があり、
賃金支払や社会保険加入については派遣元・派遣先の双方が連帯して責任を負います。また、派遣期間や職務内容、安全管理
、責任分担を明示した三者契約(派遣元・派遣先・労働者間)の締結が義務付けられています。
資本要件に明確な規定はありませんが、給与支払能力や社会保険登録の有無など、実質的な審査が行われます。
同等待遇義務: 派遣先で働く労働者は、同種業務に従事する正社員と同等の賃金・福祉・安全衛生が保障されなければなりません。
雇用責任の連帯: 派遣元・派遣先の双方が賃金支払や社会保険加入義務を連帯して負います。
三者契約の明示: 派遣期間・職務内容・安全管理・責任分担を明示した契約書を、派遣元・派遣先・労働者の三者間で締結する必要があります。
大麻・カンナビス関連事業
タイの大麻・カンナビス業事業の動向
タイは2019年に医療用大麻を合法化し、さらに2022年6月には大麻草の特定部位(葉・茎・根・種子)を麻薬リストから除外し、アジアで初めて非犯罪化が実現しました。しかしこの結果、都市部では、間違った法解釈で進んだ町のたばこ屋的なレクリエーション用販売者(Dispensary)が数多く現れ、過当競争で閉店も目立ってしまっているのも実情です。 しかし、業界としてはそれは全体の一部分 に過ぎません。
現在の政策の焦点は、単なる「解禁」から品質・安全性を重視した管理体制の確立 へと移行していることに注意が必要です。ビジネスの中心は、嗜好目的ではなくTHC・CBDなどの有効成分を活用した医療・健康・研究分野 へと変化し、医薬品・食品・化粧品への応用が拡大しています。
農業技術と品質管理体制の確立
現在、タイではGACP(Good Agricultural and Collection Practices:優良大麻栽培基準)への準拠が義務化されており、農場は単なる「栽培能力」だけでなく、農薬管理・土壌品質・栽培記録・乾燥・保存・検査体制までを包括的に管理できる体制が求められます。
これは、日本人であればいわゆるアンダーグラウンドでの個人栽培の経験で太刀打ちできる世界ではなく 、産業として、工業的農業技術と科学的品質管理を備えた新しい農業ビジネス を営む必要があることを意味しています。
具体的には、生産においてはコスト管理・安定収量確保・労働力確保や自動化といった持続可能な農業経営の視点 が欠かせません。
産業目的においては、THC/CBD抽出・分離・調整・製剤化といった工程のなかで、化学・薬学的知識と精密機器・クリーンルーム環境が不可欠であり、設備投資や専門人材の確保も必要となります。
さらに、トレーサビリティ制度・残留農薬・重金属・微生物検査・ラベル表示などのQA/QC(品質保証・品質管理)体制を確立することが、輸出競争力の前提条件となります。
合法の枠内で社会的信頼を得る運営を
世界的な「グリーンラッシュ」の潮流の中で、大麻産業は2033年には約1,500億ドル規模に成長するとの予測があります。 その中で、タイは東南アジアのハブとして注目される一方、法制度の流動性と規制強化リスク が常に存在します。
参入にあたっては、タイ人過半数による法人設立(無犯罪証明が必要)、FDA・地方保健局への届出、関連ライセンスの取得などが不可欠です。
今後の事業の成否を分けるのは、偏見や風評に屈せず、合法の枠内で社会的信頼を得る運営 を築けるかどうかにかかっています。
必要な許認可
栽培・製造・販売等の許可(FDA/伝統医療局)
管轄
食品医薬品局(FDA)、伝統医療・代替医療局
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