タイのリタイヤメントビザについては、事前にたくさんお調べになる方ほど、混乱しがちです。1つが、タイのビザ制度はめまぐるしく変更がありますし、ビザの発給基準というのが係官によって、あるいは申請される地域によって、まったく異なることが多いというのをご存じないためです。タイに長年住んでいる知人の方がこう言っていた、インターネットの個人ブログや匿名掲示板にはこう書いてあったと情報収集すればするほど、分からなくなってしまうでしょう。例えば、あるサイトは80万バーツの預金が必要だと書いてある(タイで銀行口座を持っていないのに!)、あるサイトは、銀行口座に2ヶ月以上預金が必要だと書いてある(タイに2ヶ月以上いたことがないのに!)、あるサイトは15ヶ月のビザがあると書いてある(1年以上のビザなんてない筈なのに!)等々。
もう一点は、名称です。リタイヤメントビザについては、ある人は年金ビザと呼び、またある人は、退職ビザやロングステイビザと呼び、ある人は、ノンイミグラントのOビザとか、NON-Oビザと呼びます。これは年金証明でもって申請される方は年金ビザと言いならわしたり、リタイヤという呼称が嫌だから、タイで第二の人生を謳歌するという期待をこめてロングステイビザと称したりと、人それぞれです。日本で申請するリタイヤメントビザの場合は、Non-OAビザといい、申請書類などもタイ国内で申請する場合とまったく異なるのですが、それに気づかず、情報収集してしまうとまったく異なる申請書類リストや条件を拾ってしまい、骨折り損です。
例えばこういう方がいらっしゃいました。NON-OビザのOというのは、就労目的や留学目的などでもないその他の目的の滞在であるカテゴリーであるという意味のOtherのOと言う意味なので、リタイヤメントビザ=NON-Oビザとは言えますが、NON-Oビザ=リタイヤメントビザとは言えません。タイ人の配偶者がいたり、家族にタイで働いている人が居たりするケースもあって、その場合は、タイ人との家族証明や、タイで働いている方の就業証明などが必要なのですが、そういうのが必要なのか(無いよ!)? といった問い合わせもあります。お調べになり過ぎです。さしものgoogle先生も、「NON-Oビザの必要書類」で検索された場合は、あなたが知りたいリタイヤメントだけを的確に表示することはありません。
タイ入国前で取得する方法(タイ国外申請)とタイ国内で切替える方法があります。
かんたん!安い!タイでのロングステイビザへの切替え | ||
申請場所 | 日本 | タイ |
カテゴリ | O-A | O |
資力証明 | 換算して80万バーツ以上の残高証明または月収65,000バーツ以上の年金受給証明。公証人役場にて英文で認証(費用1万円超) | 80万バーツの預金残高または月収65,000バーツ以上の年金受給証明。預金残高はタイ国内の銀行であれば100バーツ程度で取得可。 |
ビザの キャンセル |
不可 (就労する場合は日本に戻ってキャンセルする必要あり) |
タイ国内で可能 |
その他 必要書類 |
無犯罪証明書原本(英文)を各都道府県警察本部にて取得、その後、日本国外務省にて要認証(費用1万超)。更に、国公立病院発行英文健康診断書が必要(費用1万超)。 | 海外からの外貨送金証明(タイに外貨を持ち込んだ証明)が必要(送金票や空港での申告書)(※バンコクの一部の担当官ルールのようですが) |
国手数料 | 22,000円 | 2,000バーツ |
その他特記 | 大阪及び東京在住以外の人が大使館で手続きするのに時間とお金がかかる。マルチエントリーのため入国期限以内の再入国時から1年間のビザ期限となる。 | 滞在日数残が21日以上残っていること。ノービザ入国の場合は9日以内。3か月後に1年延長で1900バーツかかる。 |
タイ国内でビザがない状態から切替える場合(初年度の場合)、3ヶ月間の中期ビザを取得し、そののちに1年
ビザを取得するのが正規の手続きとなります。フリーペーパーなどで15ヶ月ビザというのが紹介されていますがこれは裏手続きによるものです。
タイ国外での申請の場合、NONOビザ(3ヶ月)のほかに、日本のタイ大使館の場合は1年マルチプルエントリーのNONOAビザの発給もあります。OAビザの場合の書類準備はタイ国内での申請に比べて複雑です。
[日本にあるタイ大使館]
・在京タイ王国大使館
・タイ王国大阪総領事館
・タイ王国名古屋名誉総領事館
日本でOAビザを取得した場合は、マルチエントリー(複数回入国可)になっていますから、ビザシールのBEFORE ENTRYの日付の日まで、何度でも入国が可能(滞在期限は一番最後にタイに入国した日から1年後)です。
ところがタイ国内でリタイヤメントビザを取得した場合は、 ビザ取得後に出国される場合は、リエントリーパーミット(再入国許可)の取得が必要です。リエントリーパーミットはシングル(1度タイ国外への出国が可能)とマルチプル(何度でもタイ国外への出国が可能)があります。シングルが1,000バーツ、マルチプルが3,800バーツですので、何度も出国する予定がなければシングルのリエントリーパーミットを都度取ることになります
なお、リエントリーパーミットは、日本のタイ大使館では取得できません。タイに入国してからイミグレーションか空港で手続きが可能です。
リエントリーパーミットの期限は、滞在許可期限までに限られます。タイ国外へ出国の予定がある場合は、リエントリーパーミットの手続きをしたからといっても、滞在期限以内に戻ってこないとだめです。滞在期限は申請ごとに延長されますが、これがタイに初めて移住される方などには分かりづらいと思いますので下表をご覧ください。
①3ヶ月のリタイヤメントビザ申請時は、2週間後のビザ審査期間まで。
②ビザ審査期間後は、①の申請時から3ヶ月後のビザ期限まで(稀に審査期間から90日後のこともあり、90日以内であることもあります。WEBサイトでの情報や人づての情報などもあると思いますが、「パスポートのビザ期限に書かれてある日付」が絶対です)。
③ビザ延長後(1年ビザ申請と同日に通常は発給)は1年後まで。
となります。
実際は①の審査期間中は、イミグレーションから問合わせがある場合もありますので、通常は海外に出る予定がない方がよく、出国するならば、申請時期をずらす必要があります。
申請に必要なもの | 備考 | |
---|---|---|
1 | パスポート原本、 証明写真、 申請フォーム |
50歳以上であること 証明写真(4センチ×6センチ)4枚 申請フォーム |
2 | 資力証明 ABCいずれか |
A,銀行通帳(タイの銀行でバーツ建てで80万バーツを自分名義で預金しているもの) タイにある銀行の口座をまだお持ちで無い場合は、日本大使館にて在留届をもらい開設します。 B,「月額6万5000バーツ以上の年金受給証明」 年金額が書いてある文書。円換算で月額65,000バーツ以上の受給証明が提出できること。 ※年金証書の英訳文署名証明書については、日本大使館領事部で発行(追記:自分で訳したり業者に訳してもらう必要はありません。大使館案内)したものをタイ外務省での書類認証する必要があります。 C,「月額6万5000バーツ以下の年金受給証明とタイの銀行預金残高」 1年間の年金受給額と銀行残高残が80万バーツを超える場合は取得できる。下記3の送金証明や持込証明などもあること。 |
3 | 外貨持込証明 初年度の3ヶ月ビザを取る場合のみ(a)(b)いずれかが必要となる |
(a)「80万バーツ以上の外貨送金証明」 銀行間の取引であること。カレンシーオンラインなどの両替商を通じた証明、暗号通貨などを利用した送金記録は使えません。 残高維持証明は、申請日当日、通帳記帳したうえで、銀行からステートメントを発行してもらいます。 外貨持込証明は、タイの空港で取得したもの原本。 ※タイ入国時スワンナプーム空港での現金持ち込の際の税関の場所はこちらを参照。 到着ロビー前、荷物受取場所付近のGoods to Declareカウンター横のCustums officeで、อยากแจ้งเอาเงินสดมาจากต่างชาติ(タイ語で、 現金持込みの申請をしたいのですがと書いてますので見せること)。通常、現金は検めないようで自己申告額を書いてくれます。 |
4 | 住所の地図と賃貸契約書 | タイの定住所が必要です。ホテルは不可ですびので、実際住む住まないにかかわらず物件を借りてください。2019年よりリタイヤメントビザ保持者の自宅にイミグレーションの係官が見回りに来るようになりました。このため仮住所を借りりや、知り合いの住所などに同居してという対応は難しいです。 |
5 | タイ保険会社での保険加入 (O-Aビザ保有者の方) | 当初O-Aビザを取得された方が、タイでビザを更新する場合、滞在期間をカバーするタイでの健康保険を、指定のウエッブサイト(※下記)で購入し、英文医療保険証を取得する必要があります。
(必須条件) |
当社手数料 | 国手数料 | |
---|---|---|
リタイヤメントビザへの切替え 3ヶ月のビザ (2週間の審査期間の後、ビザ発給) |
12,000バーツ | 2,000バーツ |
リタイヤメントビザへの切替え(NONBビザから) 1年間のビザ (ビジネスビザキャンセル手続き後出国猶予期間がある) |
23,000バーツ | 1,900バーツ |
リタイヤメントビザの延長 1年のビザ (ビザは即日発給) |
7,800バーツ | 1,900バーツ |
リエントリーパーミット (1回あたり) | 1,200バーツ | マルチ 3,800バーツ シングル 1,000バーツ |
国 | 持込み | 持ち¥出し |
日本 | 日本円100万円以上は申告必要 | 日本円100万円以上は申告が必要 |
タイ | 外貨2万USドル以上は申告必要 | 外貨2万USドル以上は申告必要 |
香港(参考) | 制限なし | 制限なし |
ロングステイヤーを「老人輸出」「年金難民」といって揶揄する言葉もあるように、明るいイメージだけでは語りきれません。若いときに海外に駐在や出張していた人や、タイ人に親類がいる人ならばともかく、何の縁もゆかりもなく、何かタイがパラダイスのようなところだと考えているならば、初めは物珍しさや生活コストの安さなどから楽しい毎日かも知れませんが、数年いますとタイにも飽き、望郷の念抑えがたくなり、日本に帰る人も多いようです。しかしそれはまだ「まし」なほうで、タイの地元新聞を見ますと、何があったか存じませんが、うまく外部のネットワークを持てずに孤独死される方もいらっしゃって、在住者としても心が痛みます。当社でも、当社は日本人の多いバンコクの会社なので無用・無力かもしれませんが、何か単独やご夫婦でタイに移住されたりしていてお困りごとがあるかたなど、人助けだと思ってお手伝したいと思いますのでお気軽にどうぞ。たとえば、話し相手が欲しいだけとかでも、どうぞ。
蓋し、ロングステイヤーは鷹揚でなければいけません。はじめの数カ月は旅行者気分もあって文化の違いを楽しむ余裕もありますが、定住者意識が強くなると、しだいに不便や文化の差を不快に思いイライラすることが増えます。元来短気な人だと向かないです。環境に適応できずに、日本に帰る人も多いです。また、物価の安さに魅力を感じて老後を過ごそうとするなら、ある程度タイに馴染むことを覚悟すべきでしょう。日本並みの生活をそのまま再現しようとすると、日本以上にコストがかかります。
・Immigration Act2522
・Thai visa ( タイ ビザ申請 )、誰も教えてくれない、タイ・ビザのイロハ
・90日レポート(3か月毎の居住報告義務)について
・バンコクのミグレーション(入国管理局/トー・モー/スーン・ラーチャカーン)へのアクセス
・ロングステイをする前に一読をお勧めしたいページ。ロングステイの光と闇 (名コラムです)
・年金は本来課税されます(実際はめったに課税されませんが・・)