タイ人は気軽に転職します。会社への忠誠心を持っている人は少ないようで、マイサバイ(居心地が悪い)、マイチョープ(合ってない)といった理由で、明日から来ません、もっと酷いのだと、今日から出勤しません、と突然言い出します。労働法では雇用者側から2週間前に辞職の意を告知する規定もありますが、来なければお終いですし、企業側は弁護士を立てて損害賠償をしたとしても、費用対効果で割に合いません。勝てるかどうかも微妙で、しかも損害賠償を求めても、一言、マイミータン(お金ない)となれば、やはり徒労です。
日本人であれば、辞職・転職というのはある種の重い決断が伴い、自分が居なければ会社がどうなるといったような責任感や、転職に失敗した際のドロップアウトへの恐怖から、決断を先延ばしにした結果、精神を壊す人や過労死してしまう人もいます。タイ人は、このような発想(集団への忠誠心、義理・人情)はまったくないような気がします。業務がどうなってもお構いなし、引き継ぎは頭になく、顧客をごっそり自分の財産にしたりというケースは枚挙にいとまがないようです。社内業務はなるべくマニュアル化して、属人化しないようにすること。
業務が大変だったり、何か社内環境に問題があるケースだとわかりやすいですが、気軽に転職サイトを眺めては、あわよくばと条件がいいところに面接に行くようです。キャリアアップと転職がごっちゃになっているのか、意欲的なタイ人は採用したときから次の転職先を探します。是非働きたい!採用してください! と数日前に懇願した人が入社当日、すいません次が見つかりましたのでさよなら、なんて悪びれずに言うことも、冗談でなくあります。あっけにとられていると、無邪気にも次の給料はいくらいくらで・・と自慢もします。
採用する側のタイに進出する企業にも非はあります。長期に勤めていてもポジションや給料の昇給は限られているが、転職をすれば簡単に給料アップにつながるシステムになっているからです。タイは空前の低失業率ですので、転職を重ねてもあまり求職者の不利にならないどころか、多くの経験を積んでいることを評価する企業がたくさんあります。数十社の転職歴があっても履歴書を改ざんするとか、長期経験者を採用したら素人同然だったという話はあり過ぎるほどです。こうした応募者は長く勤まりませんから、数カ月で辞職するものの、更に熟練の経験者として他の企業で、高給で採用されたりします。マネージャークラスになって部下を持つようになれば安泰、そういうサクセスストーリーもあります。
タイ人に責任感を期待すると裏切られることが多いです。タイ人に人情を求めても、ドライです。高い給料を払えないので、その代りに・・といって歓迎会をしたり、社内旅行に連れていったり経営者が努力しても、突然前触れも、遠慮もなく会社を辞めていきます。深い理由は、本当にありません。なぜ働きたくないの? と、どんなに問い詰めても、漠然としていて、ただ、新しいことがしたい、とかいう理由だったりします(社内研修が終わったばかりでこれを言われると最悪ですよね)。何か運命論を信じているかのように、タイ人は状況を変える努力はしません(これが仏教的な因果論の影響かわかりません)。自分が不快な環境から飛び出すことを選ぶような習性があるように感じます。
私はタイ人と日本人との結婚業務のお手伝いをし、いろんなカップルを見ていますが、夫婦関係でもタイ人は突然別人になったかのようになります。日本人ならば離婚手続きをしますが、タイ人はそれすら面倒なのかそのままで放置している人もいます。
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