会社は株主のものですので、会社にかかわる重要事項(たとえば役員の選任や決算書の承認、配当の決定、増減資、その他)の決定は、株主総会を開いて株主の合意を得なければいけません。実際のところ、俺が社長だ、何でも独断で決めるんだもん、というスタンスであっても、法律上、株主の51%以上が自分以外のタイ人資本であり、登記上は株主会社の形態であることを決して忘れてはいけません。会社の設立当初は名義を貸すだけ、条件付きで出資してもらうだけのような約束で大人しくしていたタイ人株主も、会社が利益を上げ続ければ物を言う株主に豹変するケースもあるでしょうし、株主総会における取決め事項を予めうまく付属定款で作っておかなければ取締役としての地位は安泰ではありません。会社設立時にこのあたりをおざなりにせずルールを作っておくのがベストです(よね?)。
創立総会 ประชุมตั้งบริษัท |
定時株主総会 ประชุมสามัญ |
臨時株主総会 การประชุมวิสามัญผู้ถือหุ้น |
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招集権者 | 発起人 | 取締役(会) | 取締役(会)、20%以上の株式を有する株主 |
議題内容 | 会社設立登記前に、会社定款の承認、会社役員の任命、株式数の決定等を決める。 | 定め無し。株主への決算報告や取締役・会計監査人の選任・解任、取締役の報酬、配当など | 定款変更、増資減資、合併、会社解散など必要に応じ。また、会社の損失が資本金額の半分以上となった場合は必ず開催する義務あり。 |
召集時期 | 株式引受後、遅滞なく発起人が招集 | 設立登記後、6か月以内(議題は何でもよい)。以降は年に1回(決算日以降4か月以内) | 必要に応じ |
召集方法 | 最低1回の新聞公告と配達記録による招集通知(7日前まで)
招集公告を怠った場合は取締役に対して最大5万バーツ、会社に対して2万バーツの科料
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最低1回の新聞公告と配達記録による招集通知(14日前まで)
招集公告を怠った場合は取締役に対して最大5万バーツ、会社に対して2万バーツの科料
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開催場所 | 規定なし | 規定なしだが、本店所在地または近隣県または定款で別に定めた場所。 | |
議決権 | 1株1議決権 | 1株1議決権または1人1議決権 | |
決議方式 | 投票 | 挙手方式または投票方式 | |
定足数 | 引受済株式の50%以上の出席 | 引受済株式の25%以上の出席が必要。 |
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決議要件 | 出席株主の過半数 | 普通決議(มติธรรมดา)は出席株主の過半数、特別決議(มติพิเศษ)は出席株主の4分の3以上の同意。決議が同数の場合は、議長に決定票を投票する。
普通決議は、取締役選任、取締役報酬、配当決定、会計監査人選任、決算書承認など。 特別決議は、会社売却、譲渡、他社の買取、営業賃貸、運営委託、社債発行、増資、減資、定款変更など。 |
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議長 |
規定なし(通常は発起人) | 取締役会の議長が原則。取締役の議長が無い場合は互選により選出。 | 取締役会の議長が原則。取締役の議長が無い場合は互選により選出。 |
株主総会の注意として、日本と異なり、議決権は1株1票が原則ではありません。1株/1社につき1票という挙手方式が原則としてあり、付属定款に定めがある、あるいは、2人以上の株主から投票方式が要求された場合に、株数に応じた議決が行われるとあります。 定足数を満たせば少数株主の意見が通ってしまうこともありますし、株の転売によって少数株主が増えた場合どういう対応をするかなどやはり、事前に決めておきましょう。
不利な決議がされそうなので、日本人の株主がそろって株主総会に欠席、そうすれば定足数が足りないので何も決議できない、だから安心。と思っているなら、それは誤解かも。14日以内にもう一度総会が召集されると、その総会では定足数は関係ないという取決めもあるからです。
タイの登記所では書類チェックが甘かったりということもあり、日本人の知らぬところで勝手に株主総会が開かれ、そのまま登記されていたなんていうケースも起こりえます。その際は、当然手続き的に無効ですので裁判所に訴えることができますが、不法決議後、1カ月以内です。定期的に会社の登記内容をチェックするとともに、会社の社判の厳重保管をしておきましょう。
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商売は水もの。タイでこれをやれば流行ると見込んだものの、参入障壁が低いので競争相手がすぐに台頭してしまって、収益が悪化するなんてのはありがちです。特殊な技術や特許があって生産拠点をタイに移転するだけ的なのならまだしも、タイ国内での消費を狙う飲食業やサービス業企業の場合、すべての企業が儲かるわけはありませんから、儲からない企業は退場することになります。それでも外国人企業では、ビザやワークパーミット更新のため、税務署に対して実態とは異なる申告(架空売上を作って会社経営状態を黒字申告)することも、珍しくありません。しかし、実際の話、3年以上連続する赤字決算や、資本金の半分以上の累積損があるならば、撤退・解散を検討することになるでしょう。赤字を垂れ流しつづけても継続できるのは国家だけですから。
(1) 手っ取り早いのが、会社売却。但し、会社売却先がタイミングよく見つかるかどうか。
■事業譲渡、株式譲渡、新設合併、吸収合併などの方法による。(吸収合併は旧来認められていなかったが、2020年6月23日の閣議で、民商法典の改正案が承認された)
(2) 法律にのっとった会社解散。
・一連の手順、小規模な会社だと3か月程度が目安。また、閉鎖後、書類は5年間保管義務がある(税務調査の対象期間は、原則として、解散日から通常2年、最長で5年遡及する(歳入法典19条、第88/6条等)。
・解散決議ができなかった場合は、裁判所に申し立てを行い、事業継続が不可能と判断されれば解散が認められる。
・整理解雇に伴う従業員解雇については、60日前に通知する必要があり、解雇保証金を支払う必要がある。解散で一番大変なのは整理解雇となることが多いです。
・清算人のビザについては、閉鎖手続を理由にビジネスビザの延長はできません。
・会社の資産評価は、解散日の市場価格に基づき、行われる(歳入法典、第79/3条)。この為、評価替えにより税務上の評価益が生ずる場合があります。
・解散後に残余財産に当たる銀行預金を送金する場合、清算完了及び残余財産分配決議を内容とする株主総会議事録を銀行に提出して行う。また余剰財産を国外の株主へ送金する場合は15%の源泉徴収税が課せられる。
・BOI企業の場合、恩典期間中の設備や機械などの売却については、日本から持ち込んだ機械設備をタイ国内で売却できないことから、持ち帰らざるを得ない。また恩典期間中の撤退の場合は、免除されていた税金を返還しなければならない。
・出資や株式の払い込みが完全に行われている法人で、資産が債務の支払いに不足している債務超過の場合、清算人は裁判所に対して申立書を提出することができる。一度裁判所が承認すると、裁判所は債務者に対し、破産管財人の完全な管理下におかれることを命じられ、資産または事業に関係するあらゆる行為を禁じられる。
・タイの破産法では、会社自身が破産を申し立てる自己破産の制度はないので、清算人または債権者が破産を申立てることになる(強制破産制度)。法人の場合は次の条件を満たすことが必要である。
(1)債務者が支払い不能に陥っていること
(2)債務者が法人である場合には、1名または複数の申立債権者に対して200万対バーツ以上の債務を負担していること。
(3)債務額は、ただちに支払う義務があるか否かにかかわらず算出可能なこと。
・税務署による税務調査(解散日から通常2年、最長で5年遡及)を回避するため、長期の休眠状態を取ることもあります。また、休眠後1年以上の事業の休止は、裁判所の命令による会社解散事由の1つとなります(民商法典第1237条)