物やサービスの消費者にかかる付加価値税(VAT・日本で言う消費税)と、物やサービスの提供者にかかる源泉税(販売者)があります。付加価値税は代金を受け取った販売者が責任をもって納税し、源泉税は購入者が代金より源泉税分天引きして税務申告することで、税務署はお金の流れをチェックしています。源泉税は、大きく(1)会社が従業員に払う場合、(2)会社が従業員以外の個人に払う場合、(3)個人ではなくて法人に対して支払う場合に分かれ、それぞれに分けて申請します。
種類 | 申請フォーム | 税率% | 〆日 | コメント |
VAT 付加価値税 |
PorPor30 | 7% | 15日 | 代金支払者に対する税金、 代金「受取側」が納税 |
With Holding Tax 源泉徴収 |
PorNGorDor 1、3、53 |
運送2%、サービス3%、 レンタル5%など異なる |
7日 | 代金受取者に対する税金、 代金「支払側」が納税 |
Social 社会保険 |
SorPhorSor | 雇用者5% 従業員5% |
15日 | 社会保険負担 |
付加価値税(以下、VAT)は、品物やサービスの消費に課される税です。日本でいうと消費税がこれにあたりますが税率は異なり、タイでは代金の7%を上乗せて請求・支払いが行われます。VATには、品物やサービスを買った時に支払いするINPUT VAT(以下、買いVATという)と、品物やサービスを売った時に入手するOUTPUT VAT(以下、売りVATという)があり、納税は、単純に売りVATから買いVAT引いた額を、ภพ30: Por Por30形式で申告します。売りVATが多い場合は納税、買いVATの方が多い場合は還付してもらうことが可能です(但し、還付請求には税務調査が入るほか、返金額が大きいと税務省に目を付けられる可能性があります)。
よくある質問の一つに、VATをたくさん払っているのでどうにか圧縮できないかというものがあります。仕入時に領収書の出ない店、下記に挙げるVAT領収書を発行しない店を利用しないことが第一ですが、そもそも考え方として、VATは利益ではないので使ってしまわないことです。
税務処理で使える、Tax Invoiceの条件は以下の通りです。ใบกำกับภาษีまたはTax Invoiceといった文字が書いてあるものが必要です。
TaxInvoiceの様式を満たして居る場合でも次の場合は、控除、還付の対象とならない(タイ国税法典第82/5条)
・事業者の事業と直接関係が無い仕入税
・接待交際費(宿泊費、食事、飲み物、クラブ、スポーツに関する経費)はVat込みの金額で損金計上されるが控除できない
・TaxInvoiceを発行する権利の無い者が発行したTaxInvoice(ただの店舗、個人事業主や税務登記していない年間売上高が180万バーツ以下の企業)
・10人乗り以下の乗用車購入、ハイヤーパーチェス購入、賃借譲渡にかかる仕入れ税。
1年に1度、3月末に、個人の所得税申告(Por Ngor Dor1 90/91:90が給料所得以外、91が給料所得)があります。その時に税金を一度に払わなくても済むように、毎月、会社は、税金分を給料から差し引いて社員に支払うよう法律で決められています。全社員の差引いた税金分をまとめて申告するのが毎月のPor Ngor Dor1申告です。
課税所得 | 税率 |
0~150,000バーツ | 税率免税 |
150,000超~300,000バーツ | 5% |
300,000超~500,000バーツ | 10% |
500,000超~750,000バーツ | 15% |
750,000超~1,000,000バーツ | 20% |
1,000,000超~2,000,000バーツ | 25% |
2,000,000超~5,000,000バーツ | 30% |
5,000,000超~ | 35% |
計算例)年間所得60万バーツ(日本人の最低給料月収5万バーツ×12ヶ月)の場合、控除額(仮に9万バーツとして以下計算)を引いた金額(51万バーツ)が課税対象となります。上記表から、30万バーツまでの課税が7,500バーツ(150,000*5%)、30万バーツ超50万バーツまでが20,000バーツ(200,000*10%)、50万バーツから51万バーツまでの課税が1,500バーツ(10,000*15%)。合計29,000(7500+20,000+1,500)を翌年の3月末の確定申告時支払うことになります。 会社としては、毎月、上記29,000バーツを12か月で割った2,416バーツを給料から差し引いて社員に支給します。
項目 | 控除額 | 対象 |
経費控除 | 所得金額の40%(上限6万バーツ) | |
基礎控除 | 3万バーツ | 納税者本人 |
配偶者控除 | 3万バーツ | 納税者の配偶者*タイで婚姻関係にある |
扶養控除 | 1.5万バーツ/1名(上限3名分) | 納税者の配偶者の子 |
生命保険料控除 | 1万バーツを限度(タイ国内で営業する生命保険会社で契約が10年以上のもの) | 納税者本人、配偶者 |
教育費控除 | 2,000バーツ/1名 | 扶養控除に該当する場合 |
プロピデント・ファンド(Provident Fund退職金積立基金)拠出金控除 | 1万バーツを限度 | 納税者本人(配偶者含む)の従業員負担分 |
支払利息控除 | 1万バーツを限度 | 住宅の購入時における借入の支払い利息負担分 |
社会保険控除 | 拠出額 | 納税者本人(配偶者含む)の従業員負担分 |
父母の扶養者控除 | 30,000バーツ/1名 | 納税者が扶養する本人(配偶者)の父母(年齢60歳以上かつ低所得) |
※タイでの個人所得税の節税には、1)積立死亡保険、2)年金保険、3)積立型年金投資信託(RMF:Retirement Mutual Fund)、4)長期投資信託(LTF:Long Term equity Fund)がある。銀行、金融機関、保険会社で販売。毎年20××年までと言われるが、奨励政策であり、しばらく続いている。年末のショッピング減税も恒例。タイで就労し納税している人であれば、個人所得税率分得。デメリットは、長期で保有しなければいけないこと、途中解約すると大損となること。
収入の中には非課税となるものもあります。タイで非課税となる収入についてはこちら。
1年に1度、会計年度満期5ヶ月以内(会計年度が1月~12月の場合は5月末まで)に、法人の所得税申告(Por Gor Dor51)があります。その時に税金を一度に払わなくても済むように、法人は、品物以外の売買の際、毎回、相手の所得税を引いて、支払いをされます(同時に源泉徴収票=ใบหัก ณ ที่จ่าย/バイハクナティーチャイと読む、を相手から取得しておきます)。お金を支払う側(モノやサービスの購入者)が、責任を持って取引相手の法人税の申告・納税をするのがPor Gor Dor 3/ 53申告(3が個人に対する支払、53が法人に対する支払)です。
源泉徴収率は下記のとおりですが、普段は、サービスに対して3%、レンタルに対して5%、郵送に対して1%、広告に対して2%といったことを記憶しておくとたいてい間に合います。
対象 | 支払先(被源泉徴収者) | 税率 |
不動産の売買代金 | 全ての法人 | 1% |
株式の売却益、利子 | 居住法人 | 1% タイ国の貯蓄預金に対して支払われた利息で年間30,000THBを超えない場合(定期の場合は1年以上の場合)。 |
非居住外国人 | 15%(金融機関の場合は10%) | |
配当金 | 居住法人 | 10%(配当を支払う企業の株式を25%以上 持つ企業が配当を受ける場合は免除) |
非居住外国人 | 10% 配当金を源泉した場合は、日本側では外国税額控除の恩恵がある。源泉せずに送金した場合、現地企業においては源泉分の負担に加え、利益供与となって損金に分類されず、税負担が大きい) |
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ロイヤリティ
ロイアリティとは、「情報や権利の使用対価」、テクニカルフィーとは「技術支援などの役務への対価」であり、明確に区別される。
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居住外国人 | 3% |
非居住外国人 | 15%
技術指導を含むかどうかが重要→日本・タイ租税条約 |
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役務提供(サービス)手数料 | 居住外国人 | 3% |
非居住外国人 | 15%
日本からのサービスの輸入に関しては、租税条約上、支払い時に源泉は不要。但し、サービスの提供の事実が無い場合の支払いは、単なる利益提供とみなされかねないので、出張記録や郵送記録が必要→日本・タイ租税条約 |
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賃貸料、資産リース料 ※下記注 | 居住外国人 | 5% |
非居住外国人 | 15% | |
専門家報酬 | 居住法人 | 3% |
非居住外国人 | 15% |
計算例)A社がB社に、サービス料として10,000THBを請求された場合。
サービス料 10,000 THB
VAT (10,000*7%) 700 THB
-源泉徴収(10,000*3%) - 300 THB
支払額 10,400 THB
A社はB社に対し、支払額10400THBと源泉徴収票(300THB)をB社に渡すこととなる。 B社の法人税にあたる300THBに関しては責任をもって税務署に申告・納税する義務を負う。
経理担当の税計算が間違っていた、後から伝票が出てきた、税務調査で指摘を受けた等の場合、修正申告をしなくてはいけません。その場合、高額な罰金や延滞税がかかります。税金は最優先で払いましょう。
項目 | 7日以内 | 7日以上 | ||||||||||
源泉税無申告(PorNGorDor 1、3、53)罰金 | 100THB | 200THB | ||||||||||
Vat 無申告(PorPor30)罰金 | 300THB | 500THB | ||||||||||
Vat 無申告(PorPor30)加算税 | 期間によって異なります。
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延滞税 | Tax*1.5%*月数 |
社会保険については給料の10%を、毎月、雇用者と被雇用者で半分ずつ負担します。2012年は時限立法で減額されていますが、負担上限は750バーツ(会社負担分と合わせて1500バーツ)です。予め指定した公立病院にて、無料で診断してもらえ、入院しても1日50バーツで治療してもらうことが可能ですが、私立病院とは違い、長時間待たされたあげくタイ語しか通じないといったことで使えない保険と思っている方も多いです(参考:タイの保険)。 雇用主や株主は加入しない場合が多いです(雇用主は加入できない)。
また年に一度、前年の年間賃金の5%の範囲内で事業者が労災保険料(กองทุนเงินทดแทน)を前納することになっています。職種の危険度に応じて保険料が定められており、会社により同じではありません。
種類 | 資格要件 | 給付内容 |
傷病給付 | 医療を受ける日の15か月前の期間内に3か月以上保険料を納入していること | 医療費と休業期間の賃金補償金(法定平均賃金の50%の90日分支給)ただし1年を180日分超えない期間(慢性の場合は360日分) |
障害給付 | 医療を受ける日の15か月前の期間内に3か月以上保険料を納入 | 医療費(上限2000バーツ)と働けなくなった補償金(本人の平均賃金の50%)を一生涯支給 |
出産給付 | 医療を受ける日の15か月前の期間内に7か月以上保険料を納入していれば2回まで受給可 | 出産費(1万2000バーツ)と休業期間の賃金補償金(法定賃金の50%)を90日分支給 |
死亡給付 | 死亡する前の6か月の期間内に1か月以上保険料を納入していること | 葬式代として3万バーツのほか遺族への弔慰金がある |
子女扶養給付 | 36か月間の期間内に12ヶ月以上保険料を納入、または親が障害者になったり死亡したとき | 6歳未満の子供2人までに対し、360バーツ/1か月支給 |
老齢年金給付 | 事前に180か月以上保険料を納入していること | 満55歳になった翌月から生涯給付 |
失業保険給付 | 失業後15ヶ月以内に6か月以上保険料を納入 | 解雇された場合、賃金の50%分を180日分支給(ただし上限7500バーツまで)。自主退職の場合は賃金の30%分を90日分支給。 外国人も受給可能*下参照。 |
タイの税金・税務申告についての簡単なまとめ
付加価値税(VAT=Value Added Tax)を払わなくていい・請求しなくていいケース
タイで非課税となる収入について
タイ現地法人の決算、タイでの確定申告について
日本・タイ租税条約
タイでの売掛金の時効について (民商法典193/14条)