タイの教育制度を知る ― 初等・中等・高等教育のしくみと文化

最終更新日: 2025年11月1日

ユネスコが報告しているデータに基づけば、2025年時点のタイの識字率は98%を超える高水準にあります。 特に青年層においては、ASEANでもトップクラスであり、アジアの中でも日本やシンガポールといった国々と並ぶ高い教育水準を誇っています。

タイの義務教育は満15歳までの9年間ですが、タイ社会は依然として学歴社会の傾向が強く、 良い職に就くためには大学などの高等教育が必要と認識されているため、国民総じて就学意欲は高い状態にあります。

また、18歳未満の年少者の労働については法律で厳しく制限されており、 雇用者側も罰則のリスクや制約が多く雇いにくい状況です。 経済的に恵まれない家庭や地方の農村部に住む人々を除けば、 ほとんどの若者は義務教育だけでなく、その後の教育課程も含めて、 ある程度の知能訓練と学力を身につけていると言えます。

旅行や短期の出張でタイを訪れる際に、交流を持つ機会が多いのは、 タクシー運転手、ホテルのスタッフ、観光ガイド、土産物屋の店員、 そして夜のサービス業に従事する人々といった、特定の業種の方々に限られがちです。 これにより、タイ社会全体に対する限定的な、あるいは誤った認識を持つことは少なくありません。 しかし、バンコクのような大都市が、教育が行き届かない人々ばかりが暮らす場所ではないことは明らかです。 タイの教育水準は着実に向上しており、現代的な社会を形成しています。

目次

  1. タイの初等教育
  2. タイの中等教育
  3. タイの大学教育
  4. 付記事項
    1. 学校年度の違い
    2. 大学の卒業式の特徴

タイの初等教育

タイの初等教育は「ประถมศึกษา(パトム・スクサー)」と呼ばれ、略して「ポー(ป.)」と表します。 学年は ポー・1(ヌン)〜ポー・6(ホック) の6年間です。

タイ語学習者のあいだで耳にする「ポー・ホック」は、タイ教育省が定める 小学6年生程度の語学力 を測る試験を指します。

義務教育と保護者の責任

初等教育は義務教育にあたり、子どもを正当な理由なく就学させない保護者には 1,000バーツ以下の罰金 が科せられます。

「正当な理由」の例

  • 子どもに身体または精神上の障害がある
  • 子どもが保健省の定める伝染病を持っている
  • 登校により他人に支障が生じる
  • 満14歳前でも小6課程を修了、または同等の学力を有する

タイの中等教育

中等教育は「มัธยมศึกษา(マタヨム・スクサー)」で、略して「モー(ม.)」と表します。 モー・1〜モー・3 は義務教育、モー・4〜モー・6 は日本の高校に相当します。

進路は多様で、大学進学を目指す生徒もいれば、 実践的な職業訓練を志す生徒も少なくありません。 後者は「โรงเรียนอาชีวศึกษา(ローンリアン・アチーワ・スクサー)」と呼ばれる職業訓練校で学び、 「ボー・ウォー・チョー」「ポー・ウォー・ソー」などの資格課程に進みます。

タイの大学教育

学位の呼称は次のとおりです。

学士
ปริญญาตรี(バリンヤー・トリー)
修士
ปริญญาโท(バリンヤー・トー)
博士
ปริญญาเอก(バリンヤー・エーク)

進学率は日本より低めで、背景には経済事情があるとみられます。 また教育機関のレベルには幅があるため、 採用実務では卒業校の評価や簡単な入社試験などで学力検査してを慎重に見極める 必要があります。

タイの学校制度

付記事項

[付記1]学校年度は日本と少し違います

タイの学校年度は 5月16日開始、翌年3月15日終了(2学期制)。 9月末〜10月下旬に中間休みがあります。 日本では「4月生まれ=早生まれ」ですが、タイでは 一つ下の学年 に分類される点に注意が必要です。

[付記2]大学の卒業式は翌年に開催

大学の卒業式は卒業の翌年2月に行われ、王室関係者から一人ひとりに証書が授与されます。 そのため 予行練習(リハーサル) があり、社会人でも休暇を取得することがあります。 駐在直後の日本人上司には誤解されがちですが、タイでは正式な式典前の重要な儀式です。


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